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看護師ぎんたのNURSE HACK BLOG

透析患者で一番多い不整脈。心房細動で脳梗塞を起こさせるな!

ぎんた(@NSginta)です。

透析患者で最も多い心房細動。「あの人は前から不整脈出てるからきにしなくていいのよ。」なんて、上司に言われ、心房細動を甘く見ていませんか?

心房細動で気をつけなければならないのは、心原生脳塞栓症といわれる脳梗塞です。この脳梗塞で麻痺がおこり、ADLが著しく低下する方がかなりいらっしゃいます。

脳梗塞を起こさせないために看護師ができることはあるのでしょうか?

透析患者で一番多い不整脈

心房細動は透析患者で一番多い不整脈と言われています。一般の方で心房細動がある人は1%にも満たないのに対し、透析患者の5.6~9%と、高いことが報告されています。

なぜ、透析患者は心房細動を起こしやすいのでしょうか?

透析患者というのは慢性腎臓病(CKD:Chronic Kidney Disease)の最終段階です。慢性的な高血圧などにより心血管系の動脈硬化が起きていること、体液の調整ができず(尿として体外にでない)にむくみとして残っているため、心肥大(血管内の血液量が増え、心臓にたまって大きくなる)が起きることなどが透析患者が心房細動をおこしやすい一番の原因となります。

それに加え、透析患者は高齢者が多いこと、糖尿病性腎症(糖尿病が原因で透析をするようになった人)の透析患者が多いことなども原因と考えられます。

心房細動はどのような状態なのか?

そもそも、心臓は電気信号によってそのポンプ機能をコントロールしています。洞房結節(ペースメーカーの役割)という部位から電気信号が与えられ、電気信号が心房から心室に伝わり心臓が収縮します。

心房細動は心房の中で電気信号が乱れ、ペースメーカーの洞房結節が本来の役目を果たせずに心房はただブルブルと震えている状態になります。

自覚症状はこわくない?

心房細動はもちろん不整脈ですので自覚症状として胸部不快、動悸、眩暈などが起きますが、約半数の患者さんでは自覚症状がない方もいらっしゃいます。

そのため、心房細動が出現しても気づきにくかったり、心房細動を持っていても、自覚症状がないため検査をしていない潜在的な患者も多くいるだろうとみられています。

心房の電気信号が正常に与えられなくても、心室の拍出は補われます。

これはペースメーカーの洞房結節に異常が出て、心室に電気信号を伝えれないときに、予備のペースメーカーとして房室結節が心拍の指令をだして心臓が止まらないようにするからです。

å³ï¼ 引用元:http://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/heart/pamph99.html

心房とは血液を心室に送るための袋のようなものです。心房からの電気信号と心室の拍出がリズムよく行われることで効率的な心拍出が行われます。

心房細動では、その心房が正常な働きをしないために心房に血液のよどみができやすくなります。これが心房細動の一番やっかいなところです。

血液は異変が起きると固まる。

血液には意思がある。と、僕は思っています。

凝固系の働きにより、怪我をすると血液をながしますが、血管以外のところに到達した瞬間(血が皮膚の外に出た)血は固まり始めます。

というか、この性質がないといつまでも出血をして失血死してしまいます。この血が固まるというのは生きていく上で優れた機能なのです。

心房は血液を心室に送るための袋のようなものですが、心房細動を起こすことで袋内に血液がよどみを起こし、いつまでたっても心室に運ばれず拍出されない心房内の血液は血栓を作ってしまいます。この血栓が血管内を流れて脳の大きな血管を閉塞させてしまうことを心原生脳塞栓症と言います。

除水と血圧低下

透析では体の中の余分な水分を取り除く作業をします。これを除水と言います。

除水をすることは、血液内の水分を抜くのと同じような意味合いを持ちます。血液透析では体重の数%の血液を4時間~6時間で除水するのが一般的です。しかし、この除水量があまりにも多いと、血液内の水分を多く除水し過ぎることになり、血圧低下を起こすことがあります。

この除水性の血圧低下は透析中に起こすショックの原因の一つでもあります。このショックが心房細動の誘因でもあります。透析中の過度な除水はショックを引き起こし、心房細動による血栓を作ります。脳梗塞になった場合、麻痺だけでなく場合によっては死に至ることもあります。

何故過度な除水をするのか

透析患者は一般的には週に3回の透析を続けていくことになります。僕が以前いた透析施設は1人あたり一回約4時間透析。患者数が多く、午前と午後の2クールに分けて透析の機械を使っていた為、50台ほどある機械で1日に約90人ほど透析をしていました。

除水量が多い患者の場合は時間を延長して透析することもあります。(多々あります。)

一人あたり1時間延長すると、午前・午後で2時間延長することになります。2時間の延長はスタッフの2時間の残業に直結します。

なので、4時間の透析で目標の除水量まで到達するのをあきらめたり、少し無理して除水したりすることも選択肢としてはあります。

医療者側が早く帰りたいというエゴも時にはあるでしょうが、患者さんからの要望で「除水の量をおおくして!(時間は延長するなという意味)」という状況の方が圧倒的に多いです。患者さんは4時間でも長いのに、それ以上透析治療の時間を長くしたくないからです。

これらの事情により、過度な除水が往々にして行われます。

なぜそんなに除水量が多いか

適切な飲水制限ができていないことが問題になります。

塩分を1gとると、薄めるために水分を125ml必要になります。なので、10gとると水分を約1000ml必要になります。

日本人の塩分平均摂取量は1日あたり男性11g、女性9gと言われており、塩分の制限なく水分をとると男性では一日に11gの塩分で、約1.3リットルの水分を取りたくなると考えてもらっていいと思います。

1週間で計算すると、1.3リットル×7日で9.1リットル。週3日の透析で割ると1日当たり3リットル以上の水分を除水しないといけません。

それを4時間で割って、1時間に約800mlの除水をします。水分だけを取っているとは言え、体にとってはとても大きな変化が起きています。

安全に透析をするためには一日の飲水量は500mlまでと言われていますが、まずは500mlで済むような塩分摂取から見直さないといけません。

塩分の制限はかなり難しい

塩分制限は管理栄養士でもないと難しいです。どのような食材や料理に何グラムの塩分が含まれているかなどは把握しづらいものです。

まずは看護師さん自身がどのような食生活を送っているか。その食生活の塩分摂取量はどうなのかを把握することが重要です。

それを可能にするのが塩分チェックシートです。

塩分チェックシートを用いることで気づいていない悪しき習慣を自覚することができます。

自分の習慣を自覚したうえでその習慣を治す努力をしてみてください。

塩分制限はかなり難しいことがわかります。

余談ですが、博多華丸大吉の華丸さんは「刺身は醤油を舐めるためのいいわけである。」と名言を残しました。確かにそうだと思います。

僕たちは刺身を食べたいのではなく、刺身を使って、塩をとりたいのかもしれませんね。

共感が行動を変える

あなたが減塩にチャレンジした経験があると、患者に指導ができます。透析をして患者の気持ちを知ることはできないけれど、飲水制限のきつさを減塩することによって体感することは今すぐにでもできます。そして、減塩は健康のためにもした方がよいです。

あなたの行動は共感となって患者の行動を変え、透析中の合併症を防ぐことにつながるかもしれません。

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